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路地状敷地(旗竿地)が売れなくなる!?
条例改正で大規模な長屋建築がストップへ


路地状敷地とは

路地状敷地(ろじじょうしきち)という言葉を聞いたことはありますか?
別名、「旗竿地」「敷地延長」とも呼ばれています。間口の狭い【路地状部分】だけで道路に接している土地のことで、実際に建物が建てられるのは路地状部分をのぞいた有効宅地部分だけに限定されます。周囲を隣接地に取り囲まれており、整形地に比べて通風・日照・プライバシーや非常時の避難経路を確保し辛いのが特徴です。

路地状敷地の資産価値は?
一般的には敬遠されがちな路地状敷地(旗竿地)ですが、有効宅地部分が40~50坪程度までであれば個人の住宅用地としてのサイズ感にマッチしますので、整形地の20%ダウンくらいで売れます。
ところが不動産価値として問題になってくるのは、有効宅地部分が100坪や200坪といった大きな路地状敷地です。個人の住宅用地としては大きすぎて売れませんし、間口が狭いので物理的に分割もできません。アパートやマンションといった共同住宅(特殊建築物)を建てようとすると、自治体の定める安全条例規制で建築することができません。
個人住宅には大きすぎるし、共同住宅は建てられないとなると資産価値は二束三文にしかならないのでしょうか?

唯一の逃げ道が長屋だった

これまで路地状敷地を生かす唯一の方法とされていたのが、長屋といわれる連棟式住宅です。長屋とは、戸建のように独立した住戸が隣りどうし壁を共有しながら連続している集合住宅です。長屋と聞くと、昭和初期までに多く見られた平屋建て共同炊事場のようなものを連想しますが、最近では2階~3階建て鉄骨造の【重層長屋】が主体で、テラスハウスやタウンハウスなどと呼ばれています。
長屋は一種の集合住宅ではありますが、アパートやマンションのような共用の玄関・廊下・階段がなく、各住戸ごとに個別の玄関から自由に出入りできる点が最大の特徴です。各住戸の独立性が高く緊急時の避難も個別にできるので、建築基準法上では長屋は共同住宅ではありません
実はここが重要なポイントなのです。

長屋だけが規制対象外
アパート・マンションなどの共同住宅は、不特定多数が使用する「特殊建築物」に該当しますので路地状敷地には建築できません。ところが、長屋は共同住宅(特殊建築物)ではないため規制対象外となり、路地状敷地にも建築できるという解釈が成り立ちます。
あくまでも「そういう解釈が成り立つ」というだけで、自治体の安全条例に「路地状敷地でも長屋なら建ててもいいですよ」と書いてあるわけではありません。しかし実際のところ長屋が規制されるのは非耐火構造の場合だけで、耐火・準耐火構造の長屋においては一切の規制がありませんでした。
基本的に耐火・準耐火構造の長屋であれば、路地状敷地であっても建築確認申請は問題なく受理されて着工することができていたのです。

高利回り商品としての長屋
路地状敷地は整形地に比べて安く取得できますし、長屋形式だからといって一般のアパートに比べて実際の賃料にさほど遜色があるわけではありません。土地コストが抑えられて賃料が変わらないのであれば、当然ですが高利回りの商品として市場に評価されます。本来であれば戸建用地にもアパート・マンション用地にもならない二束三文のはずの路地状敷地が、長屋という魔法のフレーズで蘇るのです。ここ数年のアパート建築ブームに乗って東京都内でも次々と事業化されています。都内好立地にある路地状敷地の利用形態としては、まさに長屋住宅の独壇場といっても過言ではありませんでした。

いよいよ都内の長屋が規制対象に

一方で、東京都内を中心に次々に竣工した2階・3階の重層長屋は、周辺住民にとっては圧迫感や日照・通風をさえぎられるだけでなく、火災時の延焼に対する不安などが指摘されておりました。都議会への陳情なども相次いでおり、ある現場では住民運動によって建築確認申請が取り消されるなど、ひとつの社会問題になっていたことも事実です。こうした実態を重く見た東京都では10月に安全条例を改正し、長屋についても建物や敷地の規模に応じて接道条件や敷地内通路の幅をこれまでよりも厳しく規制することになりました。

  【東京都安全条例改正の要点】(※概略)

  ①主な出入口(玄関)が道路に面しない住戸が10戸超(または住戸の床面積300㎡超)の場合、
   敷地内の通路幅を3m以上確保する

   ※ただし、各住戸が40㎡超(かつ住戸の床面積合計400㎡まで)の場合は、敷地内の通路幅を2m以上確保する
  ②主な出入口(玄関)を除く開口部(窓)からの敷地内避難通路を50cm以上確保する。
  ③主な出入口(玄関)から道路までの敷地内の通路が35m超の場合、その通路幅を4m以上確保する。
  ④施行日は2019年4月1日(4月1日以降に着工する物件について適用)


デベロッパーの撤退
これらの改正ポイントからわかることは、路地状敷地のように避難険路が確保しにくい土地においては、「これまでのように大規模な長屋を無制限に建てることができなくなった」ということです。一般的に多く存在する路地状敷地(旗竿地)の道路に対する間口はおよそ2m程度ですが、その場合には敷地の大小を問わず総戸数を10戸までに制限されることになります。
総戸数10戸までの小規模アパート程度の長屋であればこれまで通り建築可能ですが、20戸30戸という共同住宅並みの長屋は今後は建てることができないのです。プロのデベロッパー(不動産事業者)が土地を仕入れて長屋を建築し投資家に売却するという開発シナリオでは、最低戸数12戸~13戸がプロジェクトの損益分岐点になるケースがほとんどですから、これからは不動産事業者による路地状敷地の積極的な取得は困難になってくるでしょう。

どうなる【路地状敷地の資産価値】
今後はいくら敷地が大きくても、間口が狭い土地や路地状部分が長すぎる土地については、建てられる建物の規模が大きく制限されることになります。
収益性が減ることで不動産事業者の参入が激減し、東京都内の路地状敷地(旗竿地)の資産価値が大きな影響を受けることが予想されます。
また、今後は賃貸需要が旺盛な他の大都市圏においても、東京都と同様な条例改正が行われる可能性もあります。路地状敷地(旗竿地)を保有されている方や、将来において相続する可能性がある方は、今後の動向を注視しておく必要があるでしょう。

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