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建築物の遵法性とは何か
建築確認と完了検査の重要性について

建築確認申請

規制緩和時代の反動でしょうか、2005年あたりから企業の不祥事や法令違反が目立つようになってきました。
不動産業界においても、マンションの設計段階で構造計算書を偽造した耐震偽装問題や、ホテル竣工後に障がい者用駐車場を無許可でロビーに転用した事例などが社会問題となったことは記憶に新しいところです。こうした事件が社会問題化したことをきっかけに、建築物の遵法性(じゅんぽうせい)確保が極めて重要な社会的責任と見なされるようになり、建物の設計者や所有者に対する行政指導も以前にも増して厳しく行われるようになりました。


遵法性の基準
「建築基準法に適合していればどんな災害でもOKなんでしょ?」と聞かれることがありますが、これは誤解です。建築基準法とは、生命や財産を保護するための最低限スペック(技術的基準)を示しているに過ぎず、どんな地震や火災でもビクともしない要塞のような設計が要求されているわけではありません。「人命と財産を守るためにせめてこのスペックだけは守ってくださいね」という最低ラインを示しているに過ぎません。
建築基準法に適合した建物を造ることは社会的インフラを整備する大義があります。設計者・建設会社だけの問題ではなく所有者(建築の発注者)にとっても重要な責務ですし、賃貸マンションやオフィスビルを保有する投資家においても入居者やテナントの安全確保に努めることは当然のことです。建築物の遵法性確保に関しては、これから建築する建物はもちろんのこと、中古物件を取得する際にも重要な判断材料としてください。


違法物件は資産価値が下がる
社会的責任の問題だけでなく、経済的な問題(資産価値)についても留意しておかなければなりません。ここ数年、金融機関に対する金融庁の指導は非常に厳しいものがあります。建築基準法に適合していない建築物への融資を原則禁止としたものです。私どもの日常の仲介業務においても、明かな違法建築に対しては言うまでもなく、遵法性を公的に証明できない物件への融資が否認されたり、融資額を大きく削られたりするケースは過去に何度もありました。遵法性を欠いた物件(違法物件)は、いざ売ろうとしたときに遵法性を備えた優良物件に比べて売り辛く、資産価値が低いと言わざるを得ないのです。


遵法性確保の手順
このような時代背景から、法律に適合した建物を建築・保有するだけではもはや不十分で、その遵法性を金融機関などの第三者に対しても証明しなければならない時代となりました。その証明要件となる書類は、着工前に交付される建築確認通知書および竣工後に交付される検査済証の2種類です。具体的には次の6つのステップによって建築を進めていく必要があります。

  ① 建築確認申請
  ② 建築確認通知書の交付
  ③ 着工
  ④ 中間検査(※階数や構造によっては中間検査が必要とされないケースもあります)
  ⑤ 中間検査合格証の交付
  ⑥ 竣工
  ⑦ 完了検査
  ⑧ 検査済証の交付


書類を紛失している場合
建築確認通知書や検査済証の交付を受けたが紛失しているというケースも多いと思います。建築確認通知書や検査済証の再発行はできませんが、行政によっては建築確認通知書の交付番号・交付年月日および検査済証の交付年月日を記載した記載事項証明書を発行してくれるサービスがあります。この記載事項証明書が建築確認通知書・検査済証に代わる遵法性の証明になりますので、管轄行政窓口に照会してみるのも良いかと思います。(※古い物件は発行できない場合もあるようです)

完了検査後の違法改築
上記6つのステップによって適法に竣工した物件であっても、必ずしも現況が適法であるとは限りません。冒頭で例に挙げた、ホテル竣工後に障がい者用駐車場を無許可でロビーに転用した事例のようなケースがそれに該当します。このように、完了検査を受けて検査済証を取得した後に、違法改築・違法増築をしていることは現実には多々あります。遵法性が回復できないと銀行融資が下りないことも多いですし、そのために大きなコストを要することもあります。中古物件を取得する際には、事前に設計士などの専門家にご相談されてみてはいかがでしょうか。


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