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境界トラブルどうしたらいいの
PART 2(トラブルの解決方法)

境界紛争

前回のコラムでは、公法上の境界(筆界)私法上の境界(所有権界)の違いと、境界トラブル発生のメカニズムについてお話ししました。
境界に関するトラブルが発生した時は、まずはこの2つの境界の違いをご理解いただいた上で、有効な解決方法を選択することが重要です。現在あなたが直面している境界トラブルが、筆界に関する問題なのか、筆界・所有権界の両方に関係した問題なのかによって、アプローチが変わってきます。
筆界・所有権界ともに、まずは境界・測量・登記の専門家である土地家屋調査士に相談し、最善の解決策を模索することをおすすめします。ただし、所有権界の問題については、占有や取得時効といった法律的な判断が必要となるケースもありますので、その場合は土地家屋調査士だけでなく法律の専門家である弁護士の見解が必要となるでしょう。

筆界と所有権界とはそれぞれが別の概念によって成り立っている境界ですが、実際にはこの2つの境界は互いに密接に関係し合っています。本来は2つの境界が一致していることが理想であって、どちらか片方だけの問題を解決すれば全てOKというものではありません。後々の無用なトラブルを避けるためには、やはり公法上の境界(筆界)と私法上の境界(所有権界)とを一致させておくべきです。現況を正しく反映させた確定測量図を作成して法務局の公図・地積測量図と一致させておけば、後になって所有権界に疑義が生じたとしても、地積測量図のデータ(座標値)を基にしてすぐに境界を復元することができ、トラブルに発展することがないからです。


公法上の境界(筆界)に関する紛争解決
筆界確定訴訟
その土地を管轄する地方裁判所に提訴し裁判を起こします。判決が出るまで約2年程度かかります。通常の裁判では和解ができますが、公法上の境界である筆界については私人間の合意では変更できませんので、原告と被告が和解しようとしても無効になります。裁判所の判決によって必ず筆界が確定され、一度判決が出ると、それ以降は争いの申立てができなくなります。筆界確定の判決はあくまでも公法上の境界についての判決であり、所有権の境界に関する判決ではないことをご留意ください。
問題点もいくつかあります。弁護士費用など通常の裁判コスト以外にも裁判資料を土地家屋調査士に依頼する際のコストがかかります。また、弁護士や裁判官が必ずしも境界問題に詳しいとは限らず、裁判所の決定に矛盾が生じることもあるようです。原告・被告という形態を伴うことから、裁判後の相隣関係に遺恨を残す可能性も否定できないでしょう。せっかく筆界が確定しても、所有権界の争いが残ってしまうと元も子もありませんので慎重な判断が必要です。


筆界特定制度
平成17年に不動産登記法が改正されて新設された制度で、筆界確定訴訟に比べるとコスト・時間ともに簡略化できます。土地の所有者から管轄の法務局に申請すると、民間から選ばれた土地家屋調査士や弁護士などの筆界調査委員からの測量調査報告や意見を踏まえて、法務局の界特定登記官が筆界を特定します。申請から特定までの時間も半年から1年程度で済みます。
留意すべきポイントとしては、登記官によって一方的に筆界が特定されますので、申請者らに不服があったとしても認められない点です。先に筆界確定訴訟で判決が出ている場合には筆界特定制度は利用できませんし、筆界特定制度を利用して筆界を特定した後に筆界確定訴訟を起こすと、判決が優先されてしまいます。また、筆界確定訴訟の判決と同じく、登記官によって筆界が特定されてもそれは所有権の境界を確定したことにはなりませんのでご注意ください。


私法上の境界(所有権界)に関する紛争解決
境界(所有権界)確認訴訟
所有権の及ぶ範囲がどこまでなのかを争う裁判で、占有による取得時効などについても審理されます。裁判なので判決が出されますが、原告と被告による和解もできます。判決や和解によって所有権界については明確になりますが、同時に筆界が確定して公図の訂正ができるわけではありません。所有権界と筆界を一致させることが後のトラブル再発を防止する最善策ですので、裁判が終わって所有権界が確定したら併せて公図も訂正しておくことをおすすめします。公図の訂正をするには、当事者および隣接地権者が協力のうえ確定測量図を作成し、法務局に申請しなければなりません。


土地家屋調査士会ADR制度
ADRとは裁判外紛争解決手続きの略称です。調停というかたちで仲裁人を立てて当事者同士が話し合いで問題を解決しますので、裁判に比べて費用や時間がかからず、当事者同士の感情的なしこりが残りにくいのが特徴です。ADRを利用するには、申立人だけでなく申し立てられた相手方の両方が調停に参加する必要があり、調停にかかる費用は両者で分担します。
境界に関する専門家の土地家屋調査士と法律の専門家である弁護士が協調して仲裁にあたることで、所有権界のみならず筆界も含めた両面から問題解決にアプローチすることができるのが特徴です。所有権界に関する合意が形成できたら、その内容を確定測量図に反映させて法務局に申請し、所有権界と筆界を一致させることができます。


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